途上国からの脱出1
2024-05-11


ただし、制度の変更は現在の政治家が決めることであり、現在の政治家は世襲議員が権力の多くを握っているから、自らの利益をなくすような変更をすることは、かなり困難であることは間違いない。やはり、社会全体が、能力主義を軸とした人材活用になっていくことが必要なのだろう。

 では教育の世界で、歪んだ能力主義ではなく、個々人の能力を最大限に伸ばすような体制には、どのような変革が必要なのだろうか。
 考えていけば、いくらでもあるが、ここでは一つだけあげておきたい。
 それは「入学試験制度の廃止」である。後藤道夫他編『競争の教育から共同の教育へ』(青木書店)は、競争の教育の克服をめざした本であるが、私にとってとても納得のできないことは、入学試験について、まったく触れていないことである。日本の教育の大きな問題が、競争主義によって、発達が歪められていることにあることは、自明であり、同意できるが、そうした競争主義を現実のものとして機能させる、最も大きなシステムである入学試験を問題にせずに、単に理念的に共同の教育を押し出しても、ほとんど抽象論にすぎない。入学試験制度は、改善が何度も測られてきたが、その都度、かえって競争を激化させてきた歴史がある。現在、大学入試は、かつてほど激烈ではないが、それは制度の改善によってではなく、少子化によってもたらされたものである。逆に政策側は、競争システムの維持・強化にやっきになっているといえるのである。
 だから、現在のような入試制度は廃止しなければならないし、少子化が進行している現在は、その実現性があるといえるのである。では、どのようなシステムにしていけばよいのか。それを中心に次回述べたい。

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[教育学]

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